1日目の夜、ホテルで次の日の予定を考えていた時に、
「県立熊本農業大学校」の文字が。
どっかで聞いた事あるな〜と、早速検索。
おおっ!!藤森照信さん設計の、あの学生寮だ!!
以前新建築で見て、食堂のまるで礼拝堂のような佇まいや、
エントランスの立木の納まりをぜひ見てみたいと思っていた。
ということで、他のアートポリス物件の見学時間を圧縮して、
とにかく行ってみた。
しかし、他の物件もそうだが基本的に内部見学は、許可が無い限り不可。
今回も入り口に「御用の方は教務課、管理課へ」とあったので、
そちらへ行くも休日なので当然お休み。
しばらく敷地外をうろうろしていると、どこからとも無くテレビの音が。
思い切って敷地に入って近づいてみると、どうも舎監さんの部屋らしい。
舎監さんに声をかけて、だめ元で内部見学を申し入れたら、
「汚いですけど、自由に見ていいですよ」と、涙が出そうなお答え。
身元を明かすために名刺をお渡しし、お言葉に甘えた。
学生寮敷地入り口は、まるで神社の入り口のような
木々の間をくぐって入っていく。
エントランスからいきなり気分沸騰!!
正面入り口、あの立ち木のエントランス。
ステキすぎます。
なぜこんなプロポーションになるのかと、可能な限り採寸攻撃。
何となく見えてきました。
横から見ても、とても良いプロポーション。
軒の深さと低さが、このプロポーションのキーですね。
玄関ホールの下駄箱周辺。
柱は栗の釿(ちょうな)仕上。資料では曲面カンナ仕上と書いてあったので、
釿の代わりに曲面カンナで荒々しい仕上にしたのでしょうか。
壁は漆喰塗り回し。有明産の貝殻を焼いたもので作ったそうです。
床は杉厚板っぽい。
とにかく、静寂の中に力強さを感じさせる、とても落ち着く空間でした。
玄関ホール正面に見える中庭。
正面の切り妻屋根の下が、目指す食堂です。
この伸びやかさ、ステキすぎますね。
そしてお目当ての食堂。
入ってしばらくは、あまりの美しさに呆然としてしまいました。
柱の荒々しさと静寂の何とも言えない雰囲気。
ランダムに建った柱に支えられる天井から差し込む光。
塗り回された漆喰の白さ。
まるで清々しい森の中にいるみたいな、そんな空間でした。
空間を味わいきりたい一心で、
ここに都合20分ほど座ったり歩いたりしていたでしょうか。
住んでいる学生さんからは、訝しげな視線を受けましたが(汗)
食堂前にあった手洗い桶。
これも栗をくりぬいた上に、漆喰を塗ってありました。
それほど使わないのか、ほこりをかぶった状態でしたが、
なんだかほっこりする形に、思わず笑いが出てしまいますね。
内部を堪能した後、外部を一周。
藤森さんの外壁のディテールがてんこもり。
数歩歩いては採寸したりスケッチしたり写真撮ったり・・・
それほど大きな建物ではありませんが、
1周するのに1時間以上かかったでしょうか。
アプローチに設置してあった「常夜灯」
こういう遊び心が建築を豊かにするんですね。
今回の熊本滞在は正味1日でしたが、その中に今まで経験の無い事が山盛り。
一人で行ったから自由気侭に動けるし、見たいところはじっくり見られる。
非常に勉強にもなったし、自分自身が今後どの方向を目指して建築を進めていくのか、
考えさせられる熊本でした。