山本良一氏(東京大学教授 文部省科学省科学官)のコラムより引用
2005年から2006年にかけて、"地球温暖化"に関して
更に多くの新しい科学的知見が得られた。
その結果、人類の産業経済活動が原因の気候変動によって大気、
海洋の温暖化が生じていることはほぼ確実である。
地球の気候システムの巨大な熱的慣性のために
ある時点(ポイント・オブ・ノーリターン)を過ぎると、
たとえそれ以降温暖化効果ガスの放出を全面停止したとしても、
それ以下に抑制したい気候ターゲットを突破して気温上昇は進んでしまう。
このために"地球温暖化"問題へは可能な限り早期の対策が求められるのである。
それでは地球温暖化のポイント・オブ・ノーリターンは何時頃であろうか。
二酸化炭素(CO2)のような温暖化効果ガスの放出に対して、
大気は10年程度、海洋は100年以上の時間をかけて応答することを考えると、
大ざっぱに言って気候ターゲットを突破する年の10年程前頃が
ポイント・オブ・ノーリターンの年であると考えられる。
そうすると高度経済成長下の気候シミュレーションの結果によれば
(「気候変動+2℃」(ダイヤモンド社、2006年)参照)、
1.5℃突破のポイント・オブ・ノーリターンは2006年頃であり、
2℃突破のポイント・オブ・ノーリターンは2026年頃となる。
すなわち、日本の研究者によって行われた
世界最高水準の気候シミュレーションの結果によれば、
今年がひょっとすると生物種の大量絶滅の
引き返すことのできない年かも知れないし、
あと10年程すると今度は人類の環境破局の
引き返すことができない年かもしれないのである。
もちろん気候変動のコンピュータによる予測はまだまだ改良の余地があり、
これらの予測年度に絶対的な信頼性がある訳ではない。
しかし、近年、急速な温暖化と深刻な環境影響の発生可能性を
裏付ける多くの証拠が続々と見つかっている現在、
この気候シミュレーションの予想通りに事態が進む
可能性は高くなっていると考えられる。
詳しくは山本氏のレポートを読んで頂きたいのですが、
地球温暖化による集団的自殺行為への入り口に、
今立たされているのではないか?という知見です。
気候ターゲットで10年遅れで影響が表れるということは、
今やっていることが2016年に現れてくるということ。
今の気候は、10年前の1997年にやっていたことによる。
つまり、今の時点を見ていただけでは、
私達の将来を考えるということにはならないということです。
家庭で消費されるエネルギーは、
一次エネルギー換算(投入したエネルギーに対して、消費したエネルギーの割合)で、
2000年度で全体の1/3を消費しています。
最近では産業部門の効率化が進んでいるので、
現在ではもっと割合が増えている可能性があります。
京都議定書では2008〜12年までに6%削減の約束をしましたが、
現在では逆に10%増加してしまっています。
では、私達には何が出来るのでしょうか。
すでに今の生活レベルを一気に落とし、江戸時代レベルに戻せば、
京都議定書で約束した6%など一気に取り戻せるでしょう。
しかし、それはあまりにも現実的な解決手段の提示ではないと思います。
オール電化の元になる原子力発電はCo2フリーと言われていますが、
送電効率や機器効率、消費電力が変動するためのバッファーを確保する為に、
火力に頼らざるを得ないのが現実です。
また、核廃棄物の処分方法が確定していない現在、
ひょっとするととんでもない遺産を造っているのかもしれません。
自然エネルギーや地上資源はもともとCo2フリーです。
木を燃やしても、それと同じだけの木を植えれば±0です。
もちろん太陽熱や風力も、地球のチカラを頂く為にCo2フリーです。
そもそも、自然界は地上資源の循環で成り立っていて、
地下資源に頼っているのは人間だけなのです。
しかし残念ながら、自然エネルギーを全面的に活用した住宅はそう多くはありません。
例えば、エネルギー消費の最適化=エネルギー変換の回数を減らす。
これだけでも随分エネルギー消費を減らすことができます。
熱には熱、電気には電気。
無理に電気から熱をとり必要はなく、
太陽熱で充分な熱エネルギーを頂くことができます。
家庭で必要なお湯の温度は42度もあればいい。
暖房も20度もあればいい。
この程度の熱エネルギーは、自然エネルギーで充分まかなうことができます。
また、そろそろ意識する時期に来ている概念。
「足るを知る」
「腹8分目」
この日本人が大切にしてきたコトバ。
ほどほどがちょうど良く、足りなければ知恵で補えばいい。
寒ければ暖房の温度を上げるのではなく、1枚羽織ればいい。
暑ければ窓を開けて、風を取り込めばいい。
そんな当たり前のことが、7世代先に地球を引き継ぐことができる
ただひとつの知恵なのだと思います。